笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字768は「賃」。無賃乗車の思い出

今日の漢字は「賃」。運賃、家賃、賃金、賃貸契約。

 

無賃乗車の思い出。

    学生時代の卒業旅行のヨーロッパ。パリの地下鉄に乗ろうとしたら、券売機の使い方が全くわからない。駅員もおらず、券を買っている人もいない。券売機も壊れているものが多い。乗客は手持ちの定期や事前に回数券でも持っているのか、サクサクと改札を通過していく。さて、どうしたものかと思案していると、とある青年が改札機のバーを思い切り飛び越えて進んでいくではないか。JRの改札でいうと、膝ほどの位置に二つのバーがあるが、同じようなバーを平然と乗り越えていく。んーこの手があるのか。周りに駅員がいないのを見計らって、同じような行動をする青年の後ろを着いていき、私もひょこりとバーを難なく飛び越えた。駅員にみつからないよう、そそくさとホーム方面に小走りする。無事地下鉄に乗り、目的地の改札でも同じようにバーを飛び越えて難なくミッションコンプリート。

 

    よくよくフランスのガイドブックを見ると、ヨーロッパは比較的改札は緩く、無賃乗車には大目に見る傾向にあるようだが、時たま地下鉄の車内で抜き打ち検札をし、違反した人には運賃の数倍の金額を請求するようだった。たまたま私は車内検札に引っ掛からなかったから難を逃れたが、常習犯などは冷汗ものではなかろうか。

 

    無賃乗車で罰金のシーンに出くわしたのは、カミさんとシンガポールに旅行した時のこと。シンガポールでは、郊外にある動物園を訪問し、それなりに楽しんだ。動物園までは、行きはタクシーを使ったが、帰りのタクシーは長蛇の列であったため、仕方なく市内中心部行の路線バスに乗車した。運賃は乗車時に運転手に申告して支払う方式で、私たち夫婦はつたない英語で街中心部までの行き先を告げ、後部の座席に身を下した。バスは田舎道をとことこと進む。停留所でその都度乗客が乗ってくるが、よくよく目を凝らすと、乗車券を買わずに乗っている人も多い。そのバスは前から乗車して運賃を払い、降車時はバスの中ほどから降車する。乗客の中には、どさくさに紛れて運転手に運賃を払わず、平気な顔をして乗車している人もいた。

 

    大胆な乗客もいるものだと思ったその数分後、とあるバス停から乗車券を検札する係員が乗り込んできた。そして乗客におもむろに券をチェックしていく。我々は券をポケットから取りだし、検札に備えていたところ、大声で怒鳴り合う声が前方から聞こえてきた。そう、無賃乗車した客がばれて、検札の係員と口論になっていた。

「あんた無賃乗車でしょ」

「違うわよ。乗車券はどこかに無くしてしまったわ」

「どうして無くすの、早く出して」

「出てこないわ」

「乗車券がないなら罰金です。〇〇払ってください」

「いやよ、何で払わなければならないの」

というようなやりとり(想像)をし、10分くらい口論となっていた。

最後は乗客が折れ、罰金を払っていたが、何となく後味が悪かった。

 

    日本はきっちりとしているから、水際で無賃乗車を食い止める発想。だから新幹線内も検札がないし、改札でしっかりチェックすれば、あとは放置。国によっては、改札は甘くても検札で食い止める方法もあり、千差万別である。ただ、20年以上の前の話だから今はスイカなどの電子マネー花盛りにあっては、無賃乗車もなかなか難しいのではないかと思う。

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お駄賃という言葉は死語に近い