笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字743は「陰」。お陰さまで生きたい

今日の漢字は「陰」。陰気、山陰、陰湿、陰謀、木陰。

 

    日本語にはさまざまな美しい言葉があるが、そのひとつに「おかげさま」がある。

「おかげさまで退院できました」「おかげさまで無事退職できました」「おかげさまで娘が結婚しました」など。

    家庭や職場、地域社会、久しぶりに出会った人同士でこの言葉が飛び交うと、いい雰囲気づくりに役立つ。大概は中高年の女性がこういう言葉を使うシーンに出くわす。

「お元気ですか?」と声をかけられ、「おかげさまで元気です」と返されると、なんだか言われる方までほっとした気分になるから不思議である。

 

    似た言葉に「お互いさま」もある。「おかげさま」と言われて「いえ、お互いさまですから」と返すやりとりは、こちらも気持ちがほっこりするし、心なしかお互いが同じ時間を共有する共同体感覚につながる。

 

「おかげさま」を漢字で書くと、「御陰様」となる。「陰」という字は、神仏による庇護を意味する。そこに「御」と「様」という尊敬語が江戸時代について一般的となっていく。伊勢神宮の「おかげ参り」やそれに伴って発展した「おかげ横丁」など、伊勢神宮の存在が大きくなるにつれて、「おかげさま」が全国に広がることになる。

 

   おかげさまは、この世を創造してくれた神や、この世に遍在する万物への感謝の念を、最大限に表現できる強い言葉。とするならば、おかげさまという言葉は、目の前にいる相手だけに使うものではなく、それはイコール神や万物に対しても感謝することでもあるのだ。

 

   例えば「おかげさまで助かりました」という言葉を口にしたとき、その感謝のエネルギーは、神、大自然、日本という国、宇宙そして自分に対しても向けられている。自分自身も万物のひとつだから。

 

   また、お互いさまの「互」という字は、互助、互換、相互、交互など、さまざまな場面で使われる。元々は象形文字で、木材に切れ込みを入れて、木材どおしを組み合わせたさまを表す。そこから転じて、何かと何かが一緒になる、誰かと誰かが一緒になるという意味である。

    こうして考えると私たちは人間関係の中で生きているとともに万物に囲まれて、共生しながら生きている。つまり決して一人では生きているわけではないということである。

 

   おかげさま、お互いさまという言葉は人間関係だけではなく、万物への感謝ととらえれば、これほどすばらしい日本語もない。自然に口から出てくるように習慣化したいものでもあるし、後世にしっかりと語り継いでいく美しい言葉だと思う。

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光陰矢の如し