笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字717は「叩」。テレビは悪を叩きまくる

今日の漢字は「叩」。門を叩くのように、ほぼ「たたく」発音。

 

   テレビというメディアは、たえず素材を求めている。視聴者が食いつきそうな素材、いわゆる視聴率が稼げそうなネタを見つけ出して、それをクローズアップして視聴者に送り届ける。視聴者は一度食いついたら、しばらくは離れない特性があるため、テレビは執拗にそのネタを追いかけて伝えようとする。そしてネタはポジティブなものより、ネガティブなものの方に傾きがち。テレビを見る人たちが拍手喝采するネタよりも、皆が批判の声をあげるネタの方が、インパクトが強い。

 

   例えば、拍手喝采するネタの代表例は、池江璃花子の水泳東京五輪代表の内定。白血病を克服してオリンピック代表の座を射止めたその苦労は、多くの人の涙を誘うとともに、ぜひメダルをとの期待がかかる。彼女の活躍に拍手喝采のポジティブネタは1日中テレビを賑わせた。

   これに対局のネガティブネタは、紀州ドンファン殺人事件。25歳の妻が、13億円もの資産を持つ77歳の男性を覚せい剤で殺害したとされる容疑は、世間の耳目を集めた。まさにワイドショーの格好のネタ。テレビマンはおそらく「このネタで視聴率が稼げる」と小躍りしたことだろう。

 

   事件とか不祥事とか、誰がどう見ても社会的に非難される出来事が起きれば、叩くのは当たり前のこと。しかも50もの年の差夫婦という、どう見ても不似合いな構造の裏にお金の臭いをかぎ取ってしまう。遺産目当ての計画的犯行だとしたならば、「不幸の蜜」満載である。これから容疑者の妻は過去も含めさまざまなことが暴露されていくであろう。それはテレビ以上に週刊誌が激しく追いかけると想像される。なぜならばそれが「飯の種」になるから。雑誌売り上げアップ、テレビの視聴率アップのために、容疑者の妻はマスコミの餌食となり、丸裸にされて視聴者に消費されるだろう。特に今は毎日のコロナ報道で、視聴者はコロナに疲弊している。そうした閉塞感漂う政治、社会、芸能、スポーツにおいて、久々に現れたビッグなネガティブネタである。

 

   過去のネガティブネタの過激報道は枚挙に暇がない。アンジャッシュ渡部の不倫に留まらず、酒井法子沢尻エリカ覚せい剤ベッキーの不倫、古くはボクシング亀田一家や朝青龍へのバッシング、市橋容疑者の逃亡、オウム真理教容疑者の逮捕云々。

 

   そのたびに必ずターゲットが定められ、テレビは徹底的に叩く。特に人気タレントの場合はさらにエスカレート。テレビはなぜ叩くのか。それは、「視聴者が望んでいるから」。しかも視聴者が望む形は、視聴率という正確無比な結果で現れるから厄介である。結局テレビは視聴者を代弁する「正義の味方」として、悪をやっつけ、日頃の視聴者の不満やうっ憤を晴らす遠山の金さんに君臨しているのである。

 

   紀州ドンファン事件はおそらく一週間もあれば報道も落ち着き、徐々に人々から忘れ去られる。このあとマスコミが狙うのは間違いなく小室圭氏。皇室スキャンダルとしては、これほど食いつきの良いネタもない。一歩間違えれば皇室を敵に回す危うさを含むリスクの高い案件ではあるが、先行する週刊誌の過激報道の読者の反応を見ながら、テレビも追随するのは間違いない。生贄にされる小室氏がマスコミを相手に難局を乗り切るには相当な精神力を要するが、いつまでもアメリカにいて様子見しているわけにもいかない。コロナ禍で不満の溜まる視聴者を釘付けにするメガトン級のキラーコンテンツの発動を、テレビは手をこまねいて待っている。

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叩頭(こうとう)という言葉もある