今日の漢字712は「海」。脳の海馬は歳をとっても成長する
今日の漢字は「海」。樹海、雲海、海苔、海女、日本海。
脳の中で最も記憶と結びついている器官は「海馬」と呼ばれる小さな器官。脳は大きく分けると大脳、小脳、脳幹の3つで構成されているが、海馬は大脳の中にあり、断面がタツノオトシゴのような形をしている。
海馬は「記憶の司令塔」と呼ばれるほどに、記憶にとって重要な器官である。
その働きは、目や耳から情報が与えられると、それはまず脳のなかにある海馬に集められて、内容が一時的に保存される。次に海馬はそのなかから覚えておくべきことがらを、大脳の表面にある「大脳皮質」という場所に割り振る。大脳皮質は記憶の貯蔵庫であり、膨大な量の情報が保存されている。
こうした脳の細かい動きによって、我々は何年も前のことを覚えていられる。
また、海馬の働きは、情報を割り振るだけではなく、必要に応じて大脳皮質から情報を取り出してくる役目もある。つまり「覚える」ことに加えて、「思い出す」ことに海馬は深く関わっている。
60歳から頭を鍛え、記憶力を強化するには、海馬の働きは欠かせない。
いくら脳細胞の数が多くても、海馬がうまく働かなければ、記憶力は高まらない。逆に年をとって脳細胞の数が減っても、海馬がしっかりと働いていていれば、情報は大脳皮質に整理されて保存される。
すべては海馬の働きにかかっている。
最近の脳科学の研究では、脳細胞はほとんど増えないものの、海馬の細胞だけは、年をとっても細胞分裂をして増えるということがわかっている。
これはイギリスのマグワイヤ教授が、タクシー運転手の脳をMRIで調べたところ、海馬が一般人より大きいことがわかった。イギリスのタクシー運転手は「ザ・ナレッジ」とよばれる難関試験をパスした人。さらに研究を続けたところ、その海馬の神経細胞は20%も増殖していた。毎日複雑な道を運転することで、脳に刺激がいき、海馬が大きくなったと推測されている。
また別の研究でも一部の脳の神経細胞は、刺激を与え続けると増大することがわかっている。
これから言えることは、年をとっても「覚える」能力や「思い出す」能力はいくらでも伸ばせるということ。
海馬をさぼらせないためには、さまざまな刺激を五感から取り入れ、海馬に送り続けることが必要である。
海馬を鍛えるには考えたり、記憶したり、新しいことに挑戦する刺激を入れるのはもちろんだが、運動したり、バランスのいい食事をしたり、睡眠をしっかりとるなど、健康的な生活を営むことで活性化される。
「歳をとってもの忘れが激しくなった」とあきらめのではなく、「脳を使おう」と意識するだけで脳は刺激されるということを覚えておいた方がいいかもしれない。