笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字681は「遅」。遅咲きの漫画家、やなせたかし氏は凄い

今日の漢字は「遅」。遅刻、遅延、遅配。

 

「明日をひらく言葉」(やなせたかし)を読む。

    実は「手のひらを太陽に」は、アンパンマンの産みの親であるやなせたかし氏が作った歌だとは知らなかった。その歌の一節に「生きているからかなしいんだ」とのフレーズがある。「なぜ悲しいのか」と聞かれて、やなせ氏はこう答える。「悲しみがなければ喜びはない。不幸にならなければ幸福はわからない。僕らはこの悲喜こもごもの中に生きる。そして一番うれしいのは人を喜ばせることだ」と主張する。

 

    実はやなせ氏は、70歳でアンパンパンが大ヒットするという超遅咲きの漫画家。その歳になるまで、売れなくても好きな絵を描く生活を続けてきたという、すごい精神の持ち主でもある。

 

   「好きだということだけで、今日までけっこうおもしろくやってこられた。好きなことならコツコツ努力することもつらくはない。楽しみながら、いつの間にか何かをつかむことができる。だから好きなことを見つけて、それを一生けんめいやってほしい。見つからないなんて言っていないで、とにかく必死で探すのだ。絶対にひとつはあるはずだ」と言う。

    また、こうも述べる「ぎゅうぎゅう詰めの漫画界の満員電車に乗り込み、あきらめて途中下車せずに立ち続けていたら、あるとき目の前の席が空いた。継続は力なりというが、あきらめないでひとつのことに思い込めてやり続けていると、ちゃんと席が空いて、出番がやってくるものだ」。

  

    やなせ氏は、世に出なくても、代表作が描けなくても、黙々と漫画を描き続けてきた。アンパンマンはそうした長い歳月から生まれた「運」なのだ。運をつかむためには、自分のやりたいことをずっと継続して、やめないことだ。「継続は力なり」というと同時に「継続は運」なのである。

 

   やなせ氏は三越を退社後、漫画を描き続けるが、売れない不遇の時代が続く。50歳からアンパンマンを書き出し、54歳の時にアンパンマンの絵本が出版される。しかし評判はさんざんで、5年たっても地味で、ちっとも目立たない存在だった。ところが近くの写真屋の主人が「幼稚園に行っている坊主が、毎晩アンパンマンを読んでくれと言う」。図書館でもアンパンマンはいつも貸し出し中で、新品を入れてもすぐボロボロになったという。先入観のない幼児が手に取ることに、すでにヒットの芽があった。幼児たちの間で野火のように広がった人気は、やなせ氏が70歳の時にアニメ化の話につながる。熱心なプロデューサーが何度もねばり強く企画を出し続けたことでアニメ化が実現。何年も続く長寿番組のスタートとなった。最初は売れることもなく、地味な存在だったアンパンマンが幼稚園児の人気によって、キャラクターが2300もある日本を代表する絵本、アニメ作品となった。

 

   70歳で大ブレイクという大器晩成ぶりも凄いが、アンパンマンを20年描き続けた結果、神様はやなせ氏に運をもたらせた。「好きなことを諦めずに続ける」の言葉が、経験に裏打ちされた言葉であるだけに説得力がある。

 

   やなせ氏は2013年に94歳で天寿を全うするが、幸せな人生だったのではないか。高知県香美市には、やなせたかし記念館がある。また、やなせ氏のファンで宇宙ファンが自ら発見した小惑星にAnpanmanとYanaseと命名された星があるという。こどもたちに夢を与え続けるアンパンマンという不滅のキャラクターを後世に残したやなせ氏の功績は、本当に大きなものだと思う。

 

    では、我々は、やなせ氏のように、好きなことを続けることができるのだろうか。仕事と好きなことをマッチングして過ごせるのは作家や画家、漫画家、音楽家、スポーツ選手などいるが、凡人のサラリーマンにはなかなか続けるものは見つからない。しかしやなせ氏がいうように「好きなことを必死でみつけるのだ」という想いを胸に、愚直に継続して取り組んだ人には、充実した人生が待っているのではないかと切に思うのである。

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電車の遅延で怒るのは、いつも中年オヤジ