笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字651は「簡」。簡単に言わないで

今日の漢字は「簡」。簡単、書簡、簡易、簡素。

 

「簡単に言わないでよ」、と怒りたくも情けなかった経験。

 

   40年前の中学生でのこと。私の田舎は1年から3年まで100人くらいしかいない超小規模な中学校であった。私は卓球部であったが、全学年合わせても選手は男女で10人。団体戦が組めるかどうかの弱小チームで半分遊びのような部活であった。そんな学校であるからして当然ながら野球部も人数は少なく、確か12人くらいの選手数でチームが運営されていた。

 

    ある秋の日。私の実家は農家。秋の米の収穫シーズンは忙しい。私は部活に出ることなく、夕方、米の収穫を手伝っていた。

   そこに野球部の友達が部活が終わり、チャリンコに乗って私のいる田んぼにやってきた。わざわざ田んぼに来るということは緊急事態に違いない。「何があったのか」。案の定、「明日の中体連の新人戦の野球の試合があるけど、選手2人がケガで急遽出られなくなった。9人での出場がギリギリなので、補欠でベンチにいるだけでいいから出てくれ」と懇願された。どうもその試合では、9人だけでの出場は認められないようだった。補欠は2人必要なようで、もう一人の卓球部のやつには既に話がついているとのこと。監督である先生と相談し、突然私に白羽の矢が立ったのであった。

 

「簡単に言うなよー」と私は口を尖らせた。なぜなら私は、野球経験はほとんどなし。しかもユニフォームもない。それを問うと、「ジャージでいいらしいから。試合は一応9人は揃っているから大丈夫。滅多にケガで途中交代はないから、ベンチにいるだけでいい」と説明する。

   私が出ないと、試合は棄権となってしまう。「野球やっていないから出ない」と主張するにはあまりにも友人が可哀そうで、思わず「わかった。出る」と言ってしまった。

 

   翌日私はジャージを着て試合に。相手チームもジャージを着た選手が2人いるのを見て嘲笑している。悔しいがどうしようもできない。試合開始の整列も、ジャージを着たまま、最後列であいさつをした。超格好悪かった。

   試合は相手チームが強すぎて一方的な展開。私は、とにかく味方チームの選手がケガしないことを祈りながら試合観戦。思いが通じたのか、コールド負けで何とか無事に終了した。

   一応監督の先生からは「ご苦労さん」とひとこと、ねぎらいの言葉があったことだけが救いだった。

 

   40年以上前はそうしたのどかな試合もあって何だか漫画のようだったが、今思い出しても、前日は緊張で全く眠れなかったことは明確に覚えている。それにしても簡単に言わないでと思ったのだった。

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