笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字619は「尾」。尾道はいい街だ

今日の漢字は「尾」。馬の尾、船尾、尾翼、語尾、首尾一貫、尾行、尾藤イサオ

 

    中国地方でどこに行きたいかを問われれば、真っ先に答える街。それは尾道である。

 

    広島と答えたいところだが、メジャーすぎるし、予定調和。あまりの模範生優等生的で面白くない。ここはしぶい尾道なのである。

 

    なぜ尾道に行きたいか。大林宣彦監督の映画、尾道三部作の影響が強い。尾身としのり小林聡美の「転校生」、高柳良一原田知世の「時をかける少女」、尾身としのり富田靖子の「さびしんぼう」。どの作品も尾道が舞台となっていて、尾道の魅力がふんだんに描かれている。どれもいい映画だ。鬼籍に入られた大林監督の尾道愛が溢れた名作である。

 

    私は学生時代と社会人になってから1度ずつ尾道を訪れているが、坂道が多く、路地が細く狭くいりくんだ街の雰囲気は好きである。特に山頂付近の千光寺公園から見る瀬戸内海はその眼下に広がる独特の町並みとあいまって、絶景である。対岸にある向島へと向かう船がトコトコと進むのどかさも良く、何かタイムスリップしたような印象を受ける。

 

    訪問した時は、山頂までロープーウェイではなく、歩いて登った。途中にある民家などを横目で見ながら狭い路地を歩いたが、普段自動車生活に慣れている北海道人としては、車が入る余地のない生活空間を見るにつけ、大変だろうなと思いつつも、できることならそうした街に一度でも住んでみたいと感じた。街の中心街から住宅地まではかなりの上り坂になるから、足腰が鍛えられるし、毎日、対岸の瀬戸内海が見られるオーシャンビューに大いなる魅力を感じたのである。尾道ラーメンも旨そうだ。

 

    さきほどの映画で、映画館で見たのは「時をかける少女」くらいで、あとの2作品はテレビのロードショー(金曜ロードショー)だった。すべての作品に尾身としのりが出ているのが特長で、どの作品も飄々としながらも心の葛藤をうまく表現、演技していた尾身には好感が持てる。作品として秀逸なのは「転校生」で、ストーリーも好きだが小林聡美の演技もいい。彼女もうまく演技派女優に成長し、さまざまな映画やドラマでスパイスの効いた役を演じている。残念ながら原田知世富田靖子小林聡美ほど活躍していないが、この3部作で彼女たちが活躍した姿は、大林宣彦監督の功績とともに、後世に語り継がれていくものと思われる。

 

出川哲郎の充電させてもらえませんか」(テレ東)で彼は、電動バイク尾道を訪れた。その時彼は「尾道といえば尾道三部作でしょう」と、街の住民に映画のロケ地を尋ね歩いていた。彼も私とほぼ同年代なので、考えることは一緒のようだ。無事ロケ地を聞き出し、転校生で尾身と小林聡美が階段を転がり落ちたお寺の境内で「ここで男女が入れ替わったんだよねー」と感慨深げに話していた。

 

    思えば私もその現場に行っていた。考えてみれば、あの頃(1980年代)は、ロケ地巡礼のトレンドはまだ創世記だっように思う。各自治体も、今ほどロケ地のPRに熱心ではなかったし、フィルムコミッションのように映画のロケで町おこしにつなげる発想もなかった。ネットもない時代だから、本当に私のようなマニアしかロケ地巡りをしていなかった。時代は変わり、ロケ地巡礼という行動がトレンドとなり、趣味のひとつとなり、町おこしにつながる金の鉱脈となった現在、逆にその先駆をなした尾道が、「尾道ブランド」を今も守り続けていうような気がする。今の流行を大林監督が当時から見抜いていたとするならば、その目のつけどころは凄いと感服するしかない。今彼は天国でどのように見ているのだろうか。

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しょうもない噂に限って尾ひれがつく