今日の漢字611は「験」。コンサート初体験はさだまさしだった
今日の漢字は「験」。試験、実験、受験、霊験。
私は今までそれほど多くのアーティストのコンサートに行ったわけでないが、コンサート初体験の記憶を呼び起こしてみたい。
そのコンサートは、さだまさし。
私は高校生の頃、さだまさしにはまった。アルバムレコードを買い、家にあるステレオでしっとりと聴く日々。同級生の多くは、ビートルズやクイーンを始めとする洋楽派がほとんど。だから私は「さだまさしファンだ」とはとても言えず、アンダーグラウンドでひとり暗く楽しむさだヲタク状態であった。
当時、「グレープ」という名のデュオで「精霊流し」のヒットを飛ばしていたさだは、解散後のソロ活動としてもシングル「雨宿り」がヒット。さらにメガヒット曲「関白宣言」で一躍人気歌手に踊り出た。その後に出た「親父の一番長い日」「道化師のソネット」などしぶい曲で勝負し、玄人受けするさだまさしブランドを確固たるものにした。
そんなさだが札幌にコンサートに来る。しかし当然ながら私は一緒に行く仲間はいなかったから、一人チケットを買い、コンサート会場へ行った。高校生ではあったが、人生初のコンサートはさだまさしというのが、今思うと渋いと思う。(逆説的に言えば「暗い」だが)
さだは歌もじっくりしっとり聞かせるが、とにかく歌の合間にしゃべるトークが抜群にうまい。さだはそもそも高校・大学で落語研究会にいたことから、話に慣れている。通常アーティストは、歌がメインで、間のトークはほぼ適当。たどたどしく雑談レベルで終わることが多い(と思う)が、さだのトークはレベルが違う。その証明が、さだのコンサートでのトークだけを集めたトーク集が本とCDで発売されていることが物語っている。
30年以上も経っているのに、その初めて行ったさだまさしのコンサートで今でも覚えているトークがある。なぜだかこの話だけは覚えている。それは中国のパンダの話。
今思うと、当事さだは自らが監督する映画「長江」を制作しており、かなりの期間中国にいたから、その時に見聞きしたことを語ったのだ。ちなみに長江は大コケし、さだはそれにより35億の借金を背負ったというから、それもまた凄いことだが。
さて、そのパンダであるが、大人しい動物として知られている。あるとき、竹をむしゃむしゃ食べているAパンダがいた。そこへ意地の悪いBパンダがその食べている竹がほしいとちょっかいをかけてきた。最初は無視して竹を食べ続けるAパンダ。Bパンダはなおも、体をつっつくなどちょっかいを出す。Aパンダは我慢して大人しくしている。なおもちょっかいを出すBパンダ。それが続くとAパンダはキレた。
バコーン。Aパンダは思い切りBパンダをもの凄い力で殴り、Bパンダを撲殺してしました。
大人しいパンダは実は本気で怒るともの凄く気性の荒い動物なのだと、さだはこのエピソードをおもしろおかしくトークで披露していた。
だから何ということあろうが、そのネタで聴衆を惹きつけ、私の記憶に焼きつかせる語りをするのは凄いと実感した次第である。
歌よりもトークが記憶に残るってどういうこと?というのはあるが、多感な高校生の私の何かに引っかかったことだけは間違いない。