笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字586は「覚」。日本人の味覚は凄いのか

今日の漢字は「覚」。視覚、聴覚、覚悟、覚醒、錯覚。

 

    日本人の味覚は世界一繊細だと言われているが、果たしてそうなのか。

 

    アメリカ旅行をした時に、現地の日本人女性ガイドから、「世界三大料理は、フレンチ、中華、トルコ料理と言われていますが、三大非美食国って知ってます?」と我々観光客に問いかけた。

 

    答えは、イギリス、アメリカ、カナダなのだとか。そのガイドは、アメリカ生活が長く、「ハンバーガーと味付けのアバウトなドデカイ肉料理ばかりで、嫌になる。西海岸をこうしてバスで走って、海岸に海藻がぷかぷか浮かんでいる様子を見ると、無性に昆布や海苔を食べたくなる」と自虐的に語っていた。

 

    非美食国って全部イギリスから派生した国じゃないか。確かにイギリスはフィッシュ&チップスくらいしかない、美食とは無縁の国。アメリカもその系統を引きずっているならば可愛そうだと思いながら聞いていた。

 

   なぜイギリスは非美食国なのか。デービッドアトキンソンの「日本再生は、生産性向上しかない」にその答えが書かれていた。

 

食文化で大きな要素には宗教があるという。

食事が美味しいと言われている欧州の国は、ほとんどがカトリック

 

    そう言われてみれば、カトリックのフランス、イタリア、スペイン、ポルトガルなどの国は、料理が美味しいと言われている。

   

    カトリックは懺悔さえすれば、誰でも天国に行くことができると考える。要するに現世で贅沢をすることが許されている。だから食事についても贅をつくして、発展してきた。フランス料理は言わずもがなで、スペインでもパエリアや、お酒のつまみのピンチョス、美食の街で売り出しているサン・セバスチャンなど、食事が美味しいというイメージがある。

 

    反対に食事の美味しくない国はプロテスタントの国が多い。カトリックと対照的に贅沢品は全てNO。とにかく質素な暮らしをし、聖書を読むというストイックな宗派。アトキンソン氏はイギリス人で、お菓子や贅沢な食事は祭日かクリスマスくらいしかなかったという。学校でも暖房はなく、真夏も真冬も同じ制服。手袋やコートも禁止で、大人からは「とにかく我慢せよ」と強いられていたと苦々しく回顧している。

 

    従って贅沢な食事をする時も罪悪感に苛まれていた。このような国では食が発展しないのが当たり前である。

 

    このようなプロテスタントの国から日本に来た外国人が、日本の食の種類の豊富さ、食文化の重層性にびっくりすることは自明である。

 

    また、食文化の発展には気候風土の違いもある。

 

    一般的に温暖な国(メキシコ、イタリア、インド、中国、フランス、日本)の料理は美味しく、寒い国(ロシア、スウェーデン、イギリス)の料理は美味しくない。寒い国では新鮮な食材が入り難いことや、厳しい冬を越えるために食材を塩漬けにするから、食が発展しない。暑い国では食材に恵まれているほか、暑いと食欲が落ちるので、スパイスを効かせるなど味に工夫を凝らす。

 

    ただ、和食が本当に美味しいか言えば疑問である。よくテレビで日本の温泉に宿泊した外国人が、旅館で出される日本料理の品数の多さに「王様か貴族のようだ」と感動する。しかし、ある外国人によれば、「確かに品数は豊富だが、全体的に味が薄くて物足りない」とか、「もずくや酢の物やカニミソはとても食べられない」と不評だったと聞く。繊細な味覚から生まれた和食は凄いなどと自画自賛していると痛い目に合う。

 

    和食はヘルシー志向で注目されていることは間違いないが、はるばる日本まで来てヘルシーな和食を食べるとも思えない。せっかく来たのだからと、贅沢志向で脂っこくて濃厚なもを食べることが予測される。

 

    ちなみにインバウンドで日本に来て食べたい料理トップ7は以下の通り。

①鮨 ②しゃぶしゃぶ ③すき焼き ④天ぷら ⑤焼肉 ⑥焼き鳥 ⑦カツ丼

これらを見ても多くが肉料理である。

 

    さまざまな人が訪れるこれからの日本では、和食が無形文化遺産だと浮かれるのではなく、外国人にも受け入れられる「食のおもてなし」という文化も育てていかないと、世界四大美食国の仲間入りをすることは永遠に無理のような気がする。

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触覚をもっと研ぎ澄まそう