笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字569は「酵」。発酵食品について思いを巡らせる

今日の漢字は「酵」。発酵、酵母酵素

 

   発酵食品で代表的なものに、味噌、醤油、納豆、ヨーグルトやキムチなどがあるが、基本的に健康によいものばかり。

 

    ニシンを塩漬けした発酵食品、スウェーデンシュールストレミング。「世界で一番臭い食品」として名高い。あまりに臭いので屋内では食べられないという代物。

 

    高野秀行著の「辺境メシ」でシュールストレミングが登場する。

 

    高野氏は友人らとともにこれを試食。缶詰を開けるときは要注意。なぜなら汁がドバッと飛散して、一滴でも衣服につくと、いくら洗っても臭いが落ちないという。

 

    案の定、缶詰を開けたあとの臭いは強烈で、5メートル以上離れているのに、「くさい」との悲鳴を上げるレベル。

 

    匂いの感想は、「自宅ならば家族を外に逃がす」、「怖くて味見できない」、「一歳の子供のオムツが2、3日たまった匂い。うんちが発酵した感じ」と手厳しい。

    肝心の味だが、汁はドブ水のようで、塩辛い。食した感想は「臭いアンチョビ」。はて、アンチョビってどんな味だっけ。

 

    勇気を振り絞って食べた高野氏と友人たちの感想も、「生の川魚をかみついたよう」、「飲み込むとウッとくる」、「二度と食べたくない」と評価はさらに低くなる。

 

   私も、文章を読んだだけでも、とても食べたいとは思えなかった。

 

    そうは言っても、未知の食べ物への興味は尽きない。外国人にしてみても、納豆という臭い食べ物は、おそらく日本人がシュールストレミングを食べるのと同じ感覚なのかもしれない。

 

    TV番組で外国人に納豆を試食してもらうシーンをよく見かけるが。「絶対無理」の反応が多い。我々は幼い頃から納豆に親しんでいるから何てことはないが、嗅いだことの無い強烈な発酵臭がする納豆は、外国人にとって、とても食べ物とは思えないのだろう。本能が拒否反応を示しているようにも映る。

 

    そんな臭い食べ物の限定地域代表選手はくさや。八丈島の名物。八丈島に一回だけ訪れたことがあり、その際にくさやを食した。

 

    ムロアジやトビウオをくさや液と言われる魚醤に似た発酵液に漬けて寝かされたもの。魚自体は天日干しされて干物状態なので、焼いて食べると酒の肴としては最適という。

 

    宿泊した民宿で夜、晩酌をしながらくさやを食べてみた。初めて体面したときの第一印象は、確かに臭い。嗅いだことのない独特の臭い。具体的に言えば、泥酔して吐いた時の嘔吐物のすっぱい臭い。すえた臭いという表現が妥当か。発酵しているから当然なのだろうが、かといって顔を背けるほどの臭いではない。

 

    実際にくさやを食べた感想は、いたって普通。要するに漬けた液が臭いわけであって、魚自体が臭いわけではない。元々はアジやトビウオなので、焼いた干物は基本的に旨い。

 

    くさやと酒だけの晩酌だったが、意外といけた。酒も思いのほかよく進んだ。

 

    発酵食品は、冷蔵庫のない時代、食物を長期間保存するために編み出された調理方法。

 

     おそらく昔の人は、試行錯誤を重ねるうちに、発酵しても腐ってしまった食べ物を食べたりして、食中毒や、最悪の場合は死に至るということもあったのかもしれない。先人のチャレンジ精神の賜物と、数々の試行錯誤の末に生き残ってきたものが、現代に存在する発酵食品である。納豆やくさやを食べる日本人は、決してゲテモノイーターではなく、長生きしたい、健康に生きたい、食を楽しみたいという人間の飽くなき挑戦心の結晶なのである。。

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ビール酵母というものを見てみたい