今日の漢字550は「相」。ドイツ人とツインの相部屋になってしまった
今日の漢字は「相」。相談、相方、手相、真相、相違点、相思相愛、相田みつを。
ドイツでの思いでをひとつ。
学生時代にヨーロッパを一人旅した。フランスはパリから入国し、ベルギー、オランダ、ドイツ、スイス、イタリアと夏休みの2週間を利用して周遊。各国の鉄道の乗り放題のユーレイルパスを携え、ユースホステルを泊まり歩きながら各地の名所旧跡を堪能した。
ドイツはミュンヘンを訪問した時のこと。1日観光し、夕方 、トラム(市電)に乗って街外れのユースホステルに到着した。ユースホステルには特に予約を入れていなかったが、何とかなると思い受付に行くと、夏休みシーズンもあるのか、4人~6人が相部屋のドミトリーは満室とのこと。ただし、なぜか何部屋かあるツインルームなら空いているという。
さて、どうしたものか。街の中心部に行ってもう一度ホテルを探そうか。思案していると、隣にひとり旅らしき外国人男性がいて、一瞬目が合った。彼もドミトリーが満室で困惑しているのか、私になにやら英語で話しかけてきた。拙い理解力で必死に推察するに、ツインの部屋に一緒に泊まろうと誘ってきたのだ。
んー相部屋のツインルームに外国人と泊まるのか。しかしこれから街中まで戻ってホテルを探すのも面倒だ。まあいい、旅の恥はかき捨てだ。O.K.と答えて、一緒にツインルームに投宿となった。
とりあえず部屋に荷物を置く。彼はドイツ人の学生。夏休みを利用してドイツ北部からミュンヘンに来たようだ。私の英語は中学生レベルなので、あまり会話は弾まない。
とりあえず、どこかに晩飯を食べに行こうということになった。
二人で住宅地をプラプラ歩くうち、そのドイツ人が「このあたりに知っているイタリアンレストランがあるから行こう」と誘ってきた。
「?」旅行者なのになぜこんな辺鄙な場所のイタリアンレストランを知っているのだ?
ふと疑問が沸いた。
あの頃は(今でもそうだが)美人局ではないが、外国人がフレンドリーに近づいてきて、仲良くなった外国人をぼったくりレストランやバーに連れていき、身ぐるみをはがすという行為が横行していた。
このドイツ人は、実は旅行者ではなく、私をぼったくりの店に連れて行き、店員とグルになって高額な請求書を叩きつける魂胆かもしれない。
要注意だ。彼はどんどん歩いていく。しかし、「別の店に行こう」と私の英語力では提案などできるはずもなく、ただ黙ってついていくしかない。心臓はバコバコするし、自分が情けない。
そうこうするうちに、お目当てのイタリアンレストランに到着。中に入り、席に着いて私を手招きする。
まあ、どーにでもなれ、と彼の向かいの席に座った。
ん?どーも普通のイタリアンレストランだ。日本のぼったくりバーのイメージのような、暗くじめじめした雰囲気はなく、いたって健全そうな店だった。他の客も楽しそうに談笑している。
彼はごく自然に、やってきたウエイトレスにビールを注文し、「ここのピザはうまいんだ。前に来たこともあるしね」と呟いた。
緊張の糸が切れ、体の力が抜けた。私の心配は全くの杞憂に終わったのであった。
彼とはビールで乾杯し、そのあと、とりとめもない会話をしながら楽しいひと時を過ごしたのであった。
なお、彼は別に同性愛者でも何でもなく、普通のナイスガイ。いきなりベッドで襲われることも、寝技に持ち込まれることもなく、無事に一夜を過ごしたのであった。
ただ、シャワーから上がった彼の胸毛の濃さだけは強烈に印象に残っている。