笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字533は「領」。やっぱり北方領土は戻ってこない

今日の漢字は「領」。領地、領海、占領、領収書、横領。

 

   以前、ロシアのプーチン大統領は、北方領土をどさくさ紛れで返してくれるのでは、と言ったが、そう簡単なものではないと反省した。

その記事はこちら。

 

laughing-egao.hatenablog.com

 

    北方領土は、国後島択捉島色丹島歯舞諸島からなる日本固有の領土。しかし太平洋戦争でソ連が侵攻し、日本が負けたのをいいことに、いつの間にか北方領土を実効支配し、勝手にソ連領土にして今に至っている。国はソ連からロシアに変わったものの、日本は引き続き領土返還の交渉を進めているが、ロシア(プーチン)は明確な返答をしない。

 

   ロシアが返還しないポイントは二つあると個人的に思う。

 

    ひとつは、既にロシア人が17000人も北方領土に住んでいて、漁業などで生活を営んでいること。島の返還となると、シベリアやサハリンに移住するか、日本領土として日本人と暮らすという選択を迫られる。ロシアと日本では、文化も風習も全く違うから、現地の住民からは返還に対しては相当な批判を浴びるであろうし、プーチン政権の新たな火種となる。

 

    もうひとつは、アメリカの動き。北方領土を日本の返すということは、イコールアメリカに返すと同じことだと考える。

    冷戦は終結したとはいえ、ロシアや北朝鮮は核保有国であり、その点アメリカにとっても脅威である。北方領土が返還された暁には、アメリカは日米安保で日本と協調し、ウラジオストック北朝鮮に矛先を向けたミサイルを北方領土に配備をすることは必至といわれている。ロシアにしてみれば、そんなアメリカのいいようにされる危険な島をおめおめと手放すはずはない。ロシアの国家安全保障上、北方領土は重要な拠点なのである。

 

    だから、いくら日本の歴代首相が「いい加減北方領土を返してよ。元々は日本の領土なのに」と何度懇願しようとも、ソ連、ロシアの大統領はのらりくらりとかわしてきた。はっきり物を申さず態度が煮え切らない日本人みたいな対応で、交渉のテーブルにつこうとしない。今、ロシアはクリミア半島の領有の問題の方が重要だから、辺鄙な北方領土は後回しということなのだ。

 

    根室から外国が見えるという話を前回したが、納沙布岬からだけでなく、実は羅臼という町から知床のウトロに抜ける知床峠からは、はるかオホーツク海に浮かぶ国後島を見ることができる。ここは納沙布岬から双眼鏡で見る貝殻島と違い肉眼ではっきり見えるから、遥かなるロシアへの思いを馳せるという点では、感慨深い。本来はあの島へは根室や知床から自由に船で渡れるはずなのに、と思うと残念でならない。いつの日か日本に返還される日を夢みるが、実現可能性は低いだろう。

 

    ただ、北方領土はこのままロシア領でいいという人もいる。もし返還されると、日本は北方領土担当大臣のもと、港、空港、道路、発電所などインフラには相当な国家予算をつけて開発することは必至。北海道の建設会社のために公共事業の大奮発となることは間違いなく、多額の税金が使われる。さらに観光資源の発掘で民間会社の乱開発も気になる。また島の土地は誰の土地か。すべて国有地か、旧島民に譲渡されるのか。漁業権はどうするのか。日本が直面したことのない問題が次々と降りかかる。そんなことを考えると、今ものんびりかつひっそりと(おそらく一度もロシア国外に出ることもなく)北方領土で暮らしているロシア人を暖かく見守ることの方が、大人の対応ではないかと思ってしまう。

f:id:laughing-egao:20201021202626j:plain

アメリカ大統領はトランプかバイデンか