笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字475は「員」。ユースホステルの会員だった頃のことを思い出す

今日の漢字は「員」。委員、満員、社員、定員、人員。

 

    ユースホステルに宿泊するという行動形態は最近ほとんど聞かなくなった。

 

    というか、旅行でユースホステルを宿泊に組み込むということをほとんど聞かない。

 

    昭和50年代後期は、ユースホステル花盛りの時代であった。

 

    知らない人も多いと思うので説明すると、青少年に安全な宿を提供しようとドイツで発祥した安価な宿泊施設。学生のような貧乏旅行者はホテルに宿泊するお金はないので、1室4人程度のベットが並ぶドミトリー式の宿としてユースホステルが重宝された。会員となると、素泊まり1泊2000円程度と、ホテル価格の1/3で宿泊できた。

 

   学生時代の私も当時はユースホステルを泊まり歩き、旅費を浮かしてその分、旅行日程を長くするということをよくやっていた。

 

   ユースホステル会員用の小冊子があり、宿泊するたびに記念のスタンプを押してもらった。

 

     それを友人同士で持ち寄って、「俺はここに行った」と滅多に行けない地域のユースホステルのスタンプを見せ合い、旅の成果を自慢し合うということもあった。

 

    ユースホステルは家族的な経営が多いのと、わりと辺鄙な場所にあるため、夜は行くところがない宿泊者が食堂で団欒することが多かった。宿泊者と盛り上がることが好きなオーナーは、宿泊者を巻き込んで近くの観光名所を紹介するイベントを開いたり、宿泊者が仲良くなるようにミーティングと称して雑談会を設けたり、朝は宿泊者全員で近くの湖まで散歩をしたりと、各々が趣向を凝らしたユースホステルも多かった。

 

    またそこで知り合った宿泊者と意気投合し、その後一緒の行程で旅行するという旅行者も数多くいた。当時は電車やバスを乗り継いでユースホステルに宿泊する人が大半だから、どうしても似たような行程になる。そんな一期一会もユースホステルで実現できる、いわゆる「濃い」人との出会いがあった。

 

     そんなユースホステルは最近全く流行らない。

    その理由は、

・今の学生は皆お金をもっている。貧乏学生で旅行するときもケチケチ旅行するという全体数が減ったこと。旅行するならアルバイトでがっちり稼いで、使う時は楽しくパッとお金を使う風潮になっている。少子化でアルバイトには事欠かないから、アルバイト職種の少なかった我々の時代とはそもそも違う。

 

・ホテル代がリーゾナブルになったこと。特にビジネスホテルは地方でも5000円台もあり、ユースホステルと価格差が縮まっている。なおかつ都会ではカプセルホテルも安くて充実しているほか、宿泊も可能な漫画喫茶の存在も大きい。安く宿泊できる選択肢が増えた。

 

ユースホステルの多くが交通の不便な場所にあるため敬遠される。夜の街に繰り出すためには、ユースホステルの場所は遠い。

 

・宿泊する時は安眠したいから、見知らぬ人同士が集まるドミトリーを敬遠する風潮や、個人主義の台頭により旅行してまでわずらわしい人間関係になりたくないという心理状態。

 

・一人旅をするのが面倒くさいと思う人が増えた。アウトドアよりインドア派の増加により、そもそも一人旅をするスタイルが減った(これは推測)

 

    このように旅のスタイルが変わったことで、ユースホステルの利用者は年々減少していると思われる。

 

    私の旅の思い出は学生時代にユースホステルで知り合い、そのあと同じ方向に行くからと、一緒に行動したひとり旅の女子学生がいた。その時は、目的地までのバスの接続が悪く、2人でヒッチハイクをした。前夜のオーナー主催のミーティングで話が弾み、一緒に行動することとなったのだが、ユースホステルはそういう旅の出会いを演出するイベントが存在した。

 

    今や旅で出会って、そのあと一緒に行動を共にするということがあるのだろうか。

 

 

    一人旅が好きな私の息子の旅行時の行動を聞いても、電車、バスで乗り継いで宿泊は漫画喫茶かビジネスホテル。そんな行動形態では他の旅行者と会話することはまずない。意外性のある出会いなどはまず無理であろう。

 
    旅のスタイルが変わったから批判するわけではないが、リアルに見知らぬ人が出会って仲良くなり、旅の思い出を共有するという経験も今や絶滅危惧種の行動形態となってしまったならば、とても残念なことだと思う。ユースホステルはそういう人との出会いを演出する影ながらの立役者だったのだと今となって思う。

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子供の頃はウルトラ警備隊員になるのが夢だった