今日の漢字473は「水」。ダムで村が水没することについて考える
今日の漢字は「水」。水郷、水銀、水星、水面、水戸、水上。
水没について考える。
札幌から車で2時間ほど走ったところに芦別市という、北海道内陸部の元炭鉱で栄えた町がある。そこからさらに富良野方面に向かうと、滝里ダムという多目的ダムが見えてくる。
滝里ダムの完成は1999年。空知川をせき止め、農業用水、飲み水、水力発電などの利用目的がある。
このダム湖には以前集落があり、ダム湖に沈むため、150戸ほどの民家は移転を余儀なくされた。
実は私はダム湖に沈む前の滝里地区に仕事の関係で何度か訪ねていた。
その時に記憶にあるのが、フジテレビのドラマ「北の国から89帰郷」のシーン。蛍役の中島朋子と勇次役の緒方直人のカップルが、ダムができる前の空知川のほとりの立ち木にHとYのイニシャルを二人で刻む。緒方が「ここはもうすぐ沈むんだ」と言ってカッターで木を彫るシーンは強烈に印象に残っている。
そして私はその木を確認するために、現地に行ってみた。
当時国道から少し入ったところに駐車スペースがあり、簡単なドラマの紹介が書かれた案内板があった。
HとYが刻まれた木は確かに存在し、蛍と勇次の愛の疑似体験をしたのであった。
その木は今は湖底に沈み、見ることはできない。
ダムができるということは、洪水調整や灌漑、飲料水確保、発電と我々の生活面では大きな恩恵を受けるが、その裏には元住んでいた住民の強制移転という犠牲があることを忘れてはならない。
ネットを見ると、元集落にあった滝里神社が、移転して高台に移されたとの記載があった。本来はもうそこには人間が住んでいないから、神社の存在も微妙な位置づけにあるのだろうが、元の住民がその土地の守り神を今でも大切にするという気持ちが、ダムができた後も脈々と受け継がれているのだと思う。
住んでいた人にしてみれば、故郷が消えて無くなるというのは悲しい。そのような地域は全国に何十箇所とあるのだろうが、逆に全国で新規に大型のダムを作れる箇所も無くなってきている。
ダムの賛否を巡っては、民主党政権時に「八ツ場ダム」の建設を巡り、中止、再開と大きく揺れた。ダムは巨大投資だけに、政争の具となりやすいが、建設による効果がどこまで出るかは、造ってみないとわからない。洪水を防ぐ防波堤になるかもしれないし、飲料水確保に効果があるかもしれない。ダムは一旦建設が決まると、移転補償など巨額の税金が投入されるから、ダムを造る場合はそのメリット、デメリットをしっかりと提示の上慎重に議論し、住民不在の議論とならないよう、進めてほしいと思う。