笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字454は「志」。ようやく読み終えた三国志について考える

今日の漢字は「志」。意志、篤志家、具志堅用高志賀直哉歌志内市、後志地方。

 

最近ようやく三国志を読み終えた。まあ長かった。

 

    吉川英治著、全10巻。読み終えるのに半年かかった。長編小説は塩野七生著「ローマ人の物語」以来となるが、久々の重厚な物語を最後はため息がでるほど堪能したと言えよう。

 

    前半のハイライトは赤壁の戦い、後半は劉備玄徳亡きあと、蜀の国を率いる諸葛孔明と司馬仲達との戦いであろう。

 

    三顧の礼や、泣いて馬しょくを斬る、水魚の交わり危急存亡の秋、死せる孔明生ける仲達を走らすなど、随所に故事成語も勉強でき、全体的に飽きない内容であった。

 

     しかし全篇にわたり、とにかく魏呉蜀の三国が争う展開ばかりで、だまし討ち、寝返り、甘言を弄する策、友情物語、智謀、策略何でもありの展開に半ば唖然とする中、ほぼ領土争いに明け暮れる人間の愚かさを感じざるを得なかった。

   中国全土の統一を目指すという途方も無い大偉業を目指す壮大なドラマではあるが、そう簡単にはいかないのが難しいところである。

 

     結局最後は魏と蜀の二大勢力のガチンコ対決であったが、国力は圧倒的に魏の方があり、財力、人材とも他を圧倒していた。諸葛孔明劉備の中国統一の遺志を忠実に守り、孤軍奮闘するが、如何せん人材不足に悩み、知力策略だけでは勝つことができなかった。

 

     判官贔屓の立場からは、悪役曹操の魏を倒すべく、徳の政治を行う劉備玄徳の蜀を応援する読者が多いのだろうが、元々国力の違いがあるから、魏の圧倒的優性は変わらなかったのであろう。

 

さて、三国志から何を学んだか。

   ひとつは、人の争い、国同士が争うことの空しさはいつの時代も変わらないということ。大将の野心により、多くの若者の命が奪われたことは何とも勿体ない。

    ふたつめは戦略や戦術というよりも、いかに優秀な人材、部下を育て、登用するかということ。

    みっつめは、徳を持つ為政者が国民から慕われ、独断専行の為政者は国民から嫌われ、時に裏切りにあうということ。

     最後に結局誰のために戦うのか目的をはっきりすること。為政者の自己満足やプライドをかけて戦っているのであれば、国民の生活は全く豊かにはならない。 

 

    私の個人的意見としては、諸葛孔明の生きざまや戦に臨む姿勢は好感が持てたが、この風潮に異論を唱えるのが出口治明氏。

    同氏は、徳の政治といいながら戦争に明け暮れた諸葛孔明はとんでもない為政者だと断罪している。なぜならば、結局戦ばかりで国民を豊かにすることができなかったばかりか、若者を戦場でどんどん死なせた彼の責任はとんでもなく重いといっている。

   およそ4倍の国力の圧倒的に差がある魏に挑み続けたこと自体が戦略の誤りだったと述べている。

 

    国を治める為政者は、やはり国民のことを第一に考えて行動すべきなのであり、自らの野心のために国民を酷使することがあってはならない。

    国民をないがしろにすると、結果的に国は滅ぶということを三国志は教訓として残したかったのではないかと思う。   

 

     最後はあっけなく滅ぶ蜀の姿を見て空しさを覚えるのは私だけではないはず。

 

     平和な世の中に生きる我々は、1800年も前の争いを遠い出来事のように思うが、武力で争うという人間の行為は根本的に何も変わっていない。武力衝突は愚かな行為であることがわかっているのに止められず、殺し合いに明け暮れるのは、結局人間は2000年近く経ても全く成長していないということの証左なのかもしれない。

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飛んで飛んでの円広志が懐かしい