笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字435は「熟」。本の熟読について考える

今日の漢字は「熟」。完熟、熟成、熟語、習熟、熟練。

 

     読書には速読と熟読がある。

    世の中の人々は忙しいから、効率良く本を読み、おいしい所を素早く自分の血肉とするために速読するということが、一定の評価を得ている。書店やネット空間においても、速読に関する本や情報に溢れている。

 

    一方、本はじっくりと読んでこそ味わい深いものになるために熟読こそすべきという意見もある。

 

    佐藤優氏もその立場で、速読は熟読には敵わないという。じっくり読んで自分の中で腹落ちさせるのがいいと言うが、ただ、多くの本を熟読するのは無理との考え。せいぜいひと月に3冊も熟読すれば十分という。

 

    私自身、速読は全くできない。なぜかと言えば、速く読んでも頭に入らないという至極単純な理由。脳の構造は、速く読んで理解出来るほど高度なスペックを持っていないと私は思う。スラスラサササと読んで「あー納得した」などできる訳がない。おそらく一週間後には、きれいさっぱり忘れているだろう。あと速度しない理由は、買った本の元を取ろうという発想が根底にあるから、じっくり時間をかけて読まないと勿体ないという、ケチケチオヤジの昭和的な考えが根強くある。

 

    最近私が特に勉強するための読書で実践していることは、再読。1回目はじっくり最後まで読む。そして何日か立ったら、今度は本を汚す意図で、線を引いたり付箋を貼るなどして記憶に残るようにチェックしていく。そこが本当の熟読になる。だから時間がかかる。ただ、小説なような娯楽本は記憶にとどめるよりは、その場で楽しむのがメインなので、熟読とまではいかない半熟読の体裁を取る。

    本との付き合い方は人それぞれなので、自分に合ったスタイルで読んでいくのが良いと思う。

 

    ある著名な講演家が、出張の新幹線の中で購入したばかりの本を読んで、気になった箇所のページを片っ端から破り、破ったページは保管用に持ち帰りるのだが、バラバラになった本は、目的地の駅のゴミ箱に捨てるということを言っていた。私はそれを聞いて唖然としたし、その講演家は、著書に対するリスペクトの気持ちが全くない。一生懸命書いた自分の本がそんなぞんざいな扱いを受けたらどう思うかという想像力が欠落している。少なくとも、買ったその日にゴミ箱に棄てるようなことは私にはできない。本と出会えば、たとえつまらなかったとしても、一度は机の上やベッド、本棚などの空間に住まわさせてあげるべきだと思うが、古い考えなのだろうか。

 

    そいういう意味では、いかに熟読したくなるような本にリアル書店で出会えるかということも、選球眼を磨くという点においては、重要である。

    そこで佐藤優氏再登場。彼は、書店で本を手にした時、前書き、目次、後書きを速読せよという。なぜなら前書きやあとがきは丁寧に作られている場所だからとのこと。いわばその部分が面白ければ期待が持てる。あとは目次を見て、面白そうな項目があればそこに一気に飛んで、速読して面白そうだったり、ちょっと引っ掛かる文やフレーズがあれば迷わず買うとのこと。

 

     速読は良い目利きになるための手段だというところが彼の独特の発想であり、参考にできる。巷に溢れる膨大な本の渦の中から、自分に合った本をいかに見つけるか。数を打って失敗もしながら良書を選ぶ術を身につけたい。

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熟成されたワインはさぞかし旨いのであろう