笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字434は「葛」。レジェンド葛西氏のスキー人生について考える

今日の漢字は「葛」。葛藤、葛餅、葛湯、葛根湯、葛飾柴又、葛城ユキ

 

    現役にこだわり、好きなスポーツをとことん極めた選手といえば、イチロー、カズ、そしてレジェンド葛西紀明

    2014年ソチオリンピックラージヒルで、41歳の史上最年長で銀メダルを獲得した闘魂あふれるスキージャンパー。

   彼は1972年北海道は下川町の出身で、スキーは10歳から始めたという。高校生から頭角を現し、16歳の時にW杯の史上最年少出場を果たす。いわゆる天才ジャンパーとして将来のエースを嘱望された。原田の世紀の大失敗ジャンプが記憶に残る1994年のリレハンメルラージヒル団体では銀メダルを獲得。そのときは22歳で中心メンバーとして輝きを放ち、まさに順風満帆な人生であった。

     そんな彼がスランプに陥り、挫折を経験するのが1998年の地元開催の長野五輪。26歳で本来は油が乗っている時期であるはずなのだが、彼はジャンプの華、ラージヒル団体のメンバーから外れ、エース船木、原田らの日の丸飛行隊の金メダル獲得の陰に隠れ、メダルセレモニーにも出席できず失意の時間を過ごしたという。その時の心境を彼は「団体メンバーから外れ、無念、悔しさ、惨めな思いが入り混じり、自分でも気づかないうちに泣いていた。あの時の悔しさは今でも忘れられない」と述べている。

 

     しかしその時の悔しさを反省し、そのあとの競技人生に生かす、いわゆる逆境を跳ね返し男を強くするという方程式を自ら解いたのは間違いない。

    葛西氏は失意の長野五輪後も競技を続けるものの、W杯などでもぱっとした成績はあげられず、表舞台から消えたかのような存在であった。いわば「失意の連続」状態で2004年にW杯15勝目を挙げて以降、10年間も優勝から遠ざかる。2014年のW杯でようやく優勝をつかみとるに至るが、10年間の目立った活躍がほとんどなかったため、地道にスキーを続けている印象であった。本来であればその時、41歳で引退してもおかしくないが、そこから不死鳥のように蘇るのが彼の真骨頂。まさに「もういちど表彰台に」の夢を持ち続けたことが、現役続行できたポイントではなかろうか。

 

    そして2014年ソチ五輪、個人ラージヒルで銀メダル、ラージヒル団体で銅メダル獲得の快挙。「運命の神様がどこかで見ていて、頑張っている人間には、いつかは幸運を与えてくれると思っている。不運が訪れるなら、幸運だって巡ってくるに違いない」とインタビューで答えているように、神様は頑張った中年ジャンパーにオリンピックメダルという最高のご褒美を与えたのである。

     アスリートが40歳を超えてからメダリストになるという、常識を超えた活躍により、レジェンドの愛称が彼の代名詞となった。

    2012年には前人未踏のW杯400試合出場。16歳の時に初出場してから23年かけての偉業達成。アスリートで今やここまで続けられる日本人は、キングカズと葛西紀明だけである。

 

     長野五輪時の不調や、そのあとの勝てない不遇の時代に、勝てなくても決して腐ることなく競技に打ち込む精神力は、並大抵なことではない。決してあきらめない気持ち、うまくいかなければ、もうひと頑張りしたり工夫して変えてみようというチャレンジ精神が、ここまで競技を続けられた秘訣であろう。

     船木、原田など華々しい活躍をした金メダリストたちは皆とっくに引退した。レジェンド葛西が栄光や順風な競技人生を歩んでいなかったからこそ、ここまで続けられたのではないか。彼は2020年シーズン、48歳の今も現役を続けている。相当な練習を積み、体のケアを怠らないからこそ続けていられるのである。

 

    葛西氏は5つのギネス世界記録保持者。本当に素晴らしいし、ジャンパーだけでなく、多くの人に続けることの素晴らしさを伝えている。「続けることで神様は見放さない」伝道師として、これからも多くの人に夢を与え続けてほしいし、50歳を超えた我々だってまだまだ捨てたものではないと思えるような気がする。

・冬季五輪大会最多出場(8度)

・41歳219日でのW杯最年長優勝のちに42歳176日でさらに更新

・スキージャンプの冬季五輪最年長メダリスト41歳256日

・FISスキージャンプW杯個人最多出場569回

・FISノルディックスキー世界選手権最多出場12回

 

(参考文献「レジェンド 不屈の現役たち」(児玉光雄))

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葛西海浜公園に行くと、TDLに行きたくなる