笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字417は「遠」。タイガースに以前いた遠山選手について考える

今日の漢字は「遠」。遠足、遠縁、遠洋、遠慮、疎遠、深遠、遠江遠藤航

 

    阪神タイガースの記憶に残る選手の中に遠山奨志というピッチャーがいた。

 

   昭和60年に21年ぶりの日本一を達成し、連覇への期待がかかる翌年、遠山は投手として高卒ながらドラフト1位でタイガースに華々しく入団してきた。当時のタイガースは掛布、バース、岡田の強力クリーンアップトリオを中心に破壊力抜群の打線を誇ったが、如何せん投手力が弱く、投手陣の整備は急務であった。そんな台所事情から、1年目からローテーション入りした遠山は、順調に勝ち星を積み重ね、その年8勝をマーク。残念ながらその年3位で終わったタイガースの将来の屋台骨を支えるエースと期待された。

 

    当時は、時代劇の遠山の金さんになぞらえ、勝ち星を上げたときのスポーツ新聞の見出しが「遠山桜咲く」と躍っていたのを思い出した。

 

    しかし遠山はその後肩を壊し、翌年以降は勝ち星に恵まれなかった。周囲の期待とは裏腹に全く活躍できずに、4年後、千葉ロッテにトレードで移籍することになる。

 

    しかしロッテでも投手では活躍できず、その後打者に転向するものの鳴かず飛ばず自由契約となり、退団後のトライアウトにより再び投手としてタイガースのユニフォームを着ることとなった。

 

   その入団が転機で、実は彼はその後大復活を遂げるわけだが、遠山がタイガース監督の野村克也氏と出会わなかったら、活躍をすることはなかったかもしれない。

 

   遠山はサウスポーなので、元々左バッターには有利であったが、野村監督のアドバイスサイドスローに転向した。左バッターにはより打ちずらいフォームに変えたことで、ワンポイントリリーバーとしてサウスポーキラーとなった。

 

    特にジャイアンツの主砲、松井秀喜に対しては圧倒的な強さを発揮し、凡打に打ち取ること数知れず。この年見事、カムバック賞を受賞。タイガースの中継ぎエースとしてなくてはならない存在となった。

 

  タイガースリードの終盤になると、逃げ切りを図る野村監督は、抑えの切り札にアンダースロー葛西稔を投入し、左バッターが出てくると、ワンポイントリリーフで遠山をマウンドに。一方葛西は一塁を守るという、葛西―遠山―葛西と継投する奇策「遠山葛西スペシャル」を編み出し、高校野球のような継投策で、タイガースを勝利に導いた。

 

   一軍で華々しい活躍を遂げても、怪我やスランプで次第にレギュラーや一軍から遠ざかり、二軍落ちしたのち、二度と浮上できずに現役引退という選手は山ほどいる。

    遠山は、投手でも打者でも活躍できず、再度古巣へのテスト入団でタイガースに救われた形だが、新しいフォームや球種を試すことで、投球の幅を広げ見事復活した。監督、コーチに恵まれた運もあるかもしれないが、一旦挫折を経験しながらも這い上がり、新天地で活躍できたことは、諦めない気持ち、自分の強みをうまく生かそうと努力したことに他ならない。

 

  彼のその生き様は、野球界だけではなく、普通の社会生活を営む我々にも通じるものがある。諦めない気持ちは何もプロ野球選手だけのことではない。一般人の我々にだって夢や希望はあり、それはいくつになっても持ち続け、諦めない気持ちでトライすることが大事なのではないか。不遇を経験しても腐ることなく自己研鑽に務め、何かのきっかけでチャンスをつかみ、思いが叶う。遠山の成功例を見るにつけ、誰だってそれは可能なのだと思わずにはいられない。

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蜜蜂と遠雷(映画)はなかなか良かった