今日の漢字404は「昼」。昼行灯が暗躍した時代について考える
今日の漢字は「昼」。昼飯、昼夜、白昼夢、昼下がり、昼休み。
会社に昔、昼行灯のような人がいた。
昼行灯とは、昼に灯す行灯のように、ぼんやりしていて、いざというときに役に立たない人のこと。
バブル華やかなりし頃、とにかく酒好きで、仕事よりも酒が大好き。日中はぼんやりしていて、いつも仕事が終われば、接待と称して飲み屋に繰り出し、相当な交際費を使っていると噂された。
接待が無い日も、夕方5時になるとそわそわしだし、チャイムとともに同僚や後輩を誘ってそそくさと会社を後にし、飲み屋街へと繰り出す。5時から男の高田純次をもじり、5時から次長といわれていた。
バブル時代の象徴といえば、健康内服液「5時から男のグロンサン」と、「24時間戦えますか」のリゲインのコマーシャル。未曾有の好景気にとにかく日本全体が浮かれていた。 東京で就職した同級生は、バブル時代の狂乱を次のように述懐していた。
銀座や新宿の繁華街では、深夜のタクシーは全くつかまらない。短距離なら乗車拒否はざら。当時横浜に住んでいたその同級生は、ヒッチハイクならぬタクシーハイクで、紙に「横浜」とか書いて路上に立って何とかタクシーを捕まえたという。長距離目当ての運転手がゴロゴロいて、運転手の方が売り手市場という、今の時代では全く考えられないシーンが展開していた。
値上がりする不動産の転売や株の投資で儲けたバブル紳士たちが雨後の筍のように現れ、連日派手にお金を使う。企業も業績が良く、ボーナスアップの大盤振る舞い。クリスマス時期になると、男たちはティファニーに押しかけ指輪を買い求める客で大繁盛。
合コンでは、男はアルマーニの背広に身を包み、女はボディコンシャスのレディススーツで外見をアピール。デートはソアラかプレリュードと相場は決まっていた。女性が男に求める3高、いわゆる「高学歴」「高収入」「高身長」。
象徴的に思い出されるのは年末クリスマスのディズニーランドからのテレビ中継でのこと。当時山田邦子がレポーターで若いカップルにインタビューしていた。
山田「ディズニーランドは十分楽しまれましたか?」
カップル「ハイ」
山田「このあとはレストランとかでお食事ですか」
カップル「まーそーですねー」
山田「そのあとホテルなんか行っちゃったりなんかして」
カップル「まーそーですねー」
山田「楽しんでくださいねー」
今ならそんな質問はNG だろうが、それが許されるくらい浮かれていたということ。クリスマス時期のホテルはどこも満杯で、スイートルームから予約が埋まるという、異様な時代であった。
日本全国で24時間仕事で闘う人もいれば、酒と女にうつつを抜かして昼行灯の輩も大勢いたであろう。
考えてみればバブル時代は、高度経済成長期の最後の打ち上げ花火。あの頃、日本の経済成長は未来永劫右肩上がりが続き、日本が世界を席巻すると誰もが信じて疑わなかった。砂上の楼閣で我を忘れて踊り狂っていたつけは、そのあとデフレ不況という失われた20年につながっていく。まさにアリとキリギリスの現実版を見ているよう。
バブル崩壊で泡と消えた熱狂が、その後の日本人の価値観を根本的に変えていくことになることは、歴史の必然だったのか。あのヘンテコリンな時代の反省は、人の価値は金や車、学歴や外見ではなく、内面なのだということに多くの人が気づいたこと。所有の欲望よりも人とつながる承認欲求が、今の時代の人々の考え方の中心であるとするならば、バブル失敗の教訓は間違いなく今に活かされていると思う。