今日の漢字373
今日の漢字は「鯨」。海に住む哺乳類のくじら。捕鯨、白鯨、鯨油。
国際捕鯨委員会(IWC)で鯨保護を主張する国々と捕鯨推進の日本やノルウエーが対立する中、絶滅の危機に瀕する鯨をどう保護していくかは人類に与えられた課題であろう。
今でこそ鯨を食べることはほとんどないが、私が小学生の昭和50年代は鯨が食べられた。給食では鯨の串フライがよく出たが、あまり美味しくないほかの給食の献立の中では、鯨フライが唯一の楽しみであった。
鯨の肉はこのほかにもベーコンで加工されて普通にスーパーに売っていた。ベーコンに加工された鯨肉は匂いや味に微妙なクセがあり、給食のフライほど好きではなかったが、当時あまり裕福ではなかった我が家で鯨ベーコンがあるのは珍しく、その時は食パンに挟むなどして食べていた。
話は大きく遡って江戸時代。鎖国をしていた日本がアメリカのペリーの来航により一挙に開国に向かった。私の歴史認識では、アメリカに次いで西欧の列強国やロシアが日本を目指し、隣国の清国と同じように日本を植民地化すべく、虎視眈々と狙っていると思っていた。
しかし、実はアメリカの狙いは植民地云々以前に鯨だったということを知った。
当時、鯨から採集される油は、照明や機械の潤滑油など、産業の発展を支える貴重な燃料。アメリカでも捕鯨が盛んに行われるとともに、捕鯨の主たる漁場である広大な太平洋において、寄港地や燃料(飲料や石炭)の確保が急務であった。
さらにアメリカは、東南アジアの植民地を通じて清国市場を開拓していたイギリスやフランスの後塵を拝していたことへのあせりがあった。ターゲットは小国日本ではなく、巨大市場の超大国清国。アメリカは幕府から寄港と燃料、飲料確保の確約をもらう一方、通商要求をつっぱねられると、アメリカはその通商要求はあっさりと引っ込めた。
幕末の日本は、日本の植民地化を危惧する倒幕派が欧米に武力で対抗できるように開国、近代化を進めたと学んだ記憶があるが、その見方は国内論争ではそうだったかもしれないが、諸外国の観点からするとまた違った一面が見えてくるのではないだろうか。
日本の開国のきっかけが、ペリーが日本を植民地にしたくて来航したのではなく、アメリカの国内の産業を支える捕鯨漁を円滑に行うためだったと、歴史をもう少し深く掘り下げれば、見えてくるものも違ってくる例だと思う。