今日の漢字370
今日の漢字は「伏」。潜伏、伏流水、伏兵、起伏、降伏、伏線、山伏、伏見桃山、伏魔殿、室伏広治。
伏は字の通り、人のそばに犬が腹ばいになっている状態。古代中国では、人(武人)の横に犬が埋葬されて墓から出土していることから、白川静氏の説によると、犬が一緒に埋葬されたのは、犬が犠牲となったのではなく、地中の悪霊が亡くなった武人に憑依しないよう、お祓いの意味だったとのこと。
さて、伏兵といえば、戦場で敵の行く手に隠れて配置する兵のことをいうが、プロ野球における伏兵といえば、勝負どころで、予期せぬ選手が活躍すること。得点圏打率も低く、長打も期待できない。相手は安全パイだと思い勝負に出た結果、痛打を浴びて負けるパターンを、野球解説者は「思わぬ伏兵にしてやられた」と締めくくる。
たいていはセリーグでいうと、7番、8番の下位打線が定位置。キャッチャーや守備の名手が多い。草野球で言えばライトで8番の「ライパチ君」。
タイガースファンなので、その例で言えば、伏兵の代表選手は前田大和。登録名は大和、背番号ゼロ。ショートがメインポジションだが、セカンドや外野もこなすユーティリティプレイヤー。バントも得意で、エンドランなどの小技もきくため2番が多かったが、如何せん長打が少なく、攻撃好きな監督に当たると下位打線に配置転換された。
派手な撃ち合いが好きなタイガースファンの中では比較的地味な存在であった。守備でお客から金が取れる希有な選手ではあるが、劇的サヨナラタイムリーや価千金の逆転ホームランという打撃のイメージは全く無く、センターの大飛球補球やショートで横っ飛びのファインプレーなど、そんなのばかりである。前々監督の和田豊氏にタイプがそっくりであった。
そんないぶし銀プレーヤーの大和であるが、忘れた頃にサヨナラヒットを放つこともあり、滅多にない打力での勝利の貢献というシーンが何年かに1回見られるか見られないかゆえ、伏兵と呼ぶに相応しい選手だと感じたわけである。
大和はタイガース在籍最終年にスイッチヒッターに転向し、左右どちらの打席もそこそこの成績を残したが、若手野手との競争の激しいタイガースにおいては、なかなかレギュラーに定着しなかった。スイッチヒッターで苦労し、結果を残したにも係わらず使われないという不満がタイガース球団に対してあったのは確実で、20Ⅰ7年末にFA権を行使し横浜DeNAに移籍した。
2019年の昨シーズンは横浜でもレギュラー争いをしており、堅実なプレーでチームを支えている。まだ32歳と老け込む歳でもないので、横浜でも伏兵として大暴れしてほしい。